温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにするには、電気自動車の前面普及は前提条件です。電気自動車には、安全で、高密度のバッテリーは必須です。記事では、全個体電池が、何故、次世代電池として注目されているのか、その理由を紹介しています。
なぜ、全個体電池は次世代電池として注目されているの?
現在主流と言われるリチウムイオン電池は、液体の電解質中をイオンが動いて電子が流動して電気を発生する方式です。
リチウムイオン電池は、従来の電池に比べて素晴らしい性能ですが、電解質は発火や爆発する危険がある有機溶媒の液体です。負極と正極がショートすることや、電解質が容器から漏れ出る危険があって、どうしても安全性に懸念があります。
リチウムイオン電池が、発火や爆発する危険がある有機溶媒を使う理由は、リチウムイオンが水分と反応してしまうためです。
リチウムイオン電池は、安全性の確保のために、二重三重の安全策が必要です。そのため、どうしても電池容量は制限されてしまいます。
ところが、全個体電池の電解質は個体のため、燃えにくいことからエネルギー密度は高くできます。そのため、小さくても多くのエネルギーを蓄えられる素晴らしい性能を秘めています。
つまり、全個体電池は、リチウムイオン電池の電解液を、より安全性の高い個体化した電池です。但し、電池を構成する電解質内では、負極から正極に電子を流してリチウムイオンを放電させる必要があります。
そのため、電解質内ではイオンが素早く動き回れるような特性が必要です。従来のリチウムイオン電池では、液体の電解質を冷凍させるなどして、個体化しても電気は流れません。
技術的には、全個体電池とは、電解質を特殊な物質にして個体でも電気が流れるようにしたものです。
全個体電池に期待される性能
全個体電池が期待されているものは、次のような性能です。
- 大容量化(高密度化)
- 安全・信頼性向上(液漏れしない、爆発しない、燃えにくい)
- 長寿命(劣化しにくい)
- 小型化(高エネルギー密度)
- 低価格化(素材の選択幅広い)
全個体電池には、以上のような、優れた性能が見込まれています。その為、国は全個体電池を使用した電気自動車で、二酸化炭素の排出問題を大幅に改善することを期待しています。
電気自動車への全個体電池搭載による改善内容
現在の電気自動車は、ガソリン車等の給油にくらべて、1回の充電で走行できる距離が短く、充電時間も長い欠点があります。
電気自動車の電池を全個体電池にすると、蓄えられる電気の量は、リチウムイオン電池の2倍以上と見込まれています。その上、充電時間も短縮すると期待されています。
全個体電池の課題
全個体電池は開発中の技術のため、技術的な課題も残されています。
- 全個体電池は、個体の電解質に個体の極(正極・負極)を安定的に長時間接合し続けなければなりません。
- 電気自動車は、巨大な容量の電池が必要です。安全で高信頼度が要求される電気自動車に必要な電池の大容量化は課題です。
- 量産技術の確立が必須です。
まとめ
現在主流のリチウムイオン電池は、液体の危険な電解質中をイオンや電子が動いて電気を発生する仕組みです。この為、電解質が容器から漏れ出る等の危険があって、安全対策は必須です。
現在のリチウムイオン電池に比べて全個体電池の電解質は、個体のため燃えにくく、安全性は高くなります。そのため、エネルギーの高密度化ができて、小さくても多くのエネルギーを蓄えられます。
つまり、電気自動車のエネルギー源として有望です。
まだ、開発中のため課題もありますが、全個体電池に関する特許は、オール日本で37%も保有しています。これは、世界一です。
まだ、量産技術は確立していませんが、液体の電解質と同等以上の伝導性をもつ材料の開発が進められています。その為、いずれは課題が克服されるでしょう。
このようなことから、全個体電池は日本の将来の有望な技術として期待されています。