通信衛星は、静止衛星で始まりました。静止衛星が対応していることが分かれば、概ね通信衛星の仕組みは理解できます。周回衛星の実現には、様々な分野の技術の進歩が求められました。記事では、通信衛星の仕組みから全体像が分かるように紹介しています。
通信衛星の仕組み
通信衛星は、上空に打ち上げられて地上からの電波の受信や、受け取った電波を増幅して地球に送り返すことなどをしています。
電波は直進しますが、山や、ビルなどの障害物は上空にはないので、地上の通信よりも広範囲で電波を届けることができます。
通信衛星で中継された電波の受信などを行う、施設や装置のことを地球局と呼びます。地球局から通信衛星に電波を発信することをアップリンク、逆に衛星から、地球局に送られる電波をダウンリンクと呼んでいます。
通信衛星の中継とは?
通信衛星は、地球局からの電波を受信して、再度地上に送り返す中継をしていますが、具体的にはどんなことをしているのでしょう。
- ダウンリンクで行っていること
通信衛星はダウンリンクで、地球局に電波を中継しています。この時に伝送途中で弱くなった電波を増幅します。理由は、長距離を送信して、電波が小さくなっても地上で正しく受信できるようにするためです。 - 電波増幅時の対応
通信衛星は、地球局に電波を送り返す際にトランスポンダという中継器で電波を増幅しています。
トランスポンダは、利用者と合理的に通信するために、トランスポンダごとに、増幅率を変えて通信できるようになっています。 - 通信衛星で使用する電波の周波数
通信衛星では、大容量の情報を扱えるように、数GHz〜数10GHz程の高い周波数が使われます。地球局から通信衛星に送信する信号と、通信衛星から地球局に送られる信号の混信を避けるため、異なる周波数を使用しています。
通信衛星の軌道
電波は直進します。通信衛星は、障害物の少ない空間を利用しています。ところが、地球は自転しているため、利用者と通信衛星は、地球に隠れないような位置関係を保つ必要があります。
利用者と通信衛星の位置関係を保つには、通信衛星が地球の自転に合うように周回すれば良いことになります。
静止衛星
このような考え方から、通信衛星は地球の自転速度と同じになる赤道上の約36000km上空の軌道に、打ち上げられます。このような通信衛星は、空中で静止しているように見えるため、静止衛星と呼びます。
ところが、静止衛星が1機だと、地球の裏側までの全ての通信をカバーできません。
そのため、3機の通信衛星を120度の間隔で打ち上げています。これで、地球のどこでも通信できます。
周回衛星
静止衛星は、赤道上36000kmの軌道と決まっていますが、これは技術的な制約で他の手法が無かったためです。ところが、近年、様々な分野の技術が向上したため、地球の周りを移動する周回衛星でも対応できるようになりました。
周回衛星を可能にするには、通信衛星の運行に関わる技術や電波の受け渡しなど、静止衛星では必要としなかった技術が必要です。そして、コンピュータ技術・情報技術・電子技術などの様々な技術の進歩で、周回衛星は実現しています。
そのため、軌道高度も距離が短くて済む500〜2000kmの低高度軌道や、逆に地球から離れる軌道を描く長楕円軌道もあります。
尚、周回衛星の場合も、1機では地球全体をカバーできません。電波の直進性と地球が丸いためです。そのため、周回衛星も、複数機で運用しています。
まとめ
通信衛星の仕組みについて紹介してきました。
通信衛星の歴史が、静止衛星で始まった理由も分かったと思います。
尚、周回衛星は静止衛星では必要としなかった新しい技術が求められています。特に、お互いに動いている複数機での電波の受け渡しは、高度な技術が求められます。
さらに、地球の周囲には既に多くの衛星が打ち上げられていて、寿命もあります。寿命が終った衛星などの回収技術は、既にSF映画やマンガで使われています。使用済み衛星の回収も、今後の重要な課題でしょう。