IPプロトコルの通信方式には、1対1でデータのやり取りをする通信以外に、ブロードキャストとマルチキャスト方式があります。記事では、これらの通信方法や、ブロードキャストで主に使われているプロトコルの動作などを、分かりやすく紹介しています。
ブロードキャストとは?
IPプロトコルの通信方式は、1対1でデータのやり取りをする通信を連想しますが、それ以外の通信形態もあります。
ユニキャストは、1対1で行う通信です。これに対して、同じLANに接続している全てのコンピュータにデータを届ける通信方式をブロードキャストと呼びます。
ブロードキャストの代表的なプロトコルは、ARPとDHCPの2つです。
ARPとは?
インターネット通信では、宛先の指定はIPアドレスで行われます。一方で、LAN内の機器の特定は、MACアドレスで指定されます。
つまり、LANの入口で、IPアドレスとMACアドレスを対応する仕組みが必要です。
この時、コンピュータはIPアドレス内のネットワークアドレスを見て転送先を決めます。
この時、ネットワークアドレスが自分と同じなら、送信先は、イーサネットなどで既に接続していると判断します。そして、IPアドレスから、MACアドレスを導き出すための動作をします。
しかし、自分のネットワークアドレスと違う時には、IPパケットは、次のルータに引き渡します。続いて、ルータのIPアドレスから、MACアドレスを入手します。
このような一連の動作に使われるプロトコルをARP(Address Resolution Protocol)と呼びます。
ARP(アープ)によってIPアドレスからMACアドレスを入手した場合は、コンピュータは、次のように動作します。
MACアドレスを宛先に指定したイーサネットフレームで、IPパケットを宛先のコンピュータに送信します。
DHCPとは?
DHCPは、Dynamic Host Configuration Protocolの頭文字です。これは、ネットワークに接続したコンピュータに、ネットワーク設定情報を自動的に配布するための仕組みの事です。
DHCPを使う場合は、次の事柄が前提です。それは、コンピュータにDHCPクライアント機能が搭載されていて、DHCPサーバーが設置されていることです。
DHCPが使用できる環境なら、コンピュータをネットワークに接続する情報は、ほぼ準備されています。
尚、一般的には、ルータ内にDHCPサーバー機能が備わっています。
そのため、小規模LANや家庭で使用する場合は、DHCPサーバーを準備しなくても自動ネットワーク設定を活用できます。
ブロードキャストの送信方法
ブロードキャストによる送信は、次の2つの方法です。
- リミテッドブロードキャストアドレス
宛先のIPアドレスを、255.255.255.255にしてパケットを送信する。こうすることで、同じイーサネット内にある全てのコンピュータに届けられます。 - ディレクテッドブロードキャストアドレス
これは、IPアドレスのホスト部を全て1にしてパケットを送信するものです。
ディレクテッドブロードキャストアドレスの場合は、他のネットワークのコンピュータに送信することも可能です。但し、一般的には、ルータはブロードキャスト通信を禁止しているため、他のネットワークには送信されません。
マルチキャストとは?
マルチキャストは、あるグループ内の特定のコンピュータ群だけにデータを送信する方式です。
マルチキャストに用いられるアプリケーションは、テレビ会議や映像配信、音声配信などです。
IPマルチキャスト技術を使うと、1対1で送信するユニキャスト方式よりもよりも次のことができます。それは、ネットワークに特別な負荷をかけないで特定のコンピュータ群に映像信号や音声信号を送ることです。
まとめ
ブロードキャストは、同じLANに接続している全てのコンピュータにデータを届ける通信方式です。代表的なプロトコルには、ARPとDHCPがあります。
マルチキャストは、あるグループ内の特定のコンピュータ群だけにデータを送信する通信方式です。
IPマルチキャスト技術は、ユニキャスト方式よりも、ネットワークへの負荷をかけずに特定のコンピュータ群に信号を送れます。