IH調理器は、火のでない安全な調理器として注目されていますが、IH調理器のコンロ上に適正な鍋を置かないと発熱もしません。ちょっと不思議な仕組みです。この記事では、出来るだけ分かりやすく発熱方法を紹介してIH調理器全般の疑問点を解消します。
IH調理器の不思議
IH調理器は、従来のガスコンロのように炎が出ていないし、適正な鍋を置かないと発熱しません。今までの常識とは違う方法で熱を出しています。
IH調理器は、炎が出ないため火災を発生しにくい調理器具として注目されています。安心感はありますが、IH調理器は、機種によって使える鍋に制限があることや、値段の幅も大きくて選択に迷います。
ちょっと不思議で分からないことの多いIH調理器について、わかりやすく紹介します。
IH調理器が発熱する仕組み
IH調理器のIHは、Induction Heatingの頭文字です。Induction Heatingは、電磁誘導加熱という意味です。電磁誘導加熱は英国の科学者:マイケル・ファラデーが発見した電磁誘導現象を基礎にした金属を加熱する非接触の過熱方式です。
原理は簡単です。導線に電流を流すと導線の周りには、目に見えない磁力線が生じます。この磁力線に鍋底の金属が触れると、うず電流が発生するという物理現象を使っています。
うず電流が生まれると熱が発生する仕組み
うず電流というのは電流です。金属に電流が流れると、金属がもっている抵抗成分が電流を流さないように働きます。流れようとする電流と、流しにくくする金属の抵抗によって自己発熱(ジュール熱)します。
IH調理器は、このジュール熱で鍋底を発熱させて調理器にしたものです。
IH調理器に使用できる鍋材質
近年のIH調理器はオールメタル仕様のものもあります。ただし、IH調理器が市場に出始めた頃は、鉄製のものしか使えませんでした。
IH調理器が鍋の材質を選ぶ理由は、うず電流を生じさせる仕組みや、ジュール熱などのことを考えると分かります。
うず電流は、磁力線に触れる金属があれば生じます。ただし、磁力線を貫通させる鍋底の金属の種類で、うず電流の大きさは違います。
鍋材質によるIHの加熱特性
鍋に使われる金属材質によってIH加熱特性は大きく違います。
次に、主な材質による発熱効率を紹介します。
No | 材 質 | 性 質 | 発 熱 効 率 | 優位性 |
1 | 鉄 | 磁性が有るため、磁力線の影響大 | 抵抗加熱+磁力線 | ◎ |
2 | ステンレス | 磁力線の影響少ない | 抵抗加熱良好 | ○ |
3 | 銅 | 磁力線の影響小、抵抗成分も小 | 技術でカバー要 | △ |
4 | アルミニウム | 磁力線の影響小、抵抗成分も小 | 技術でカバー要 | △ |
まとめ
IH調理器は、電磁誘導現象をベースにした、金属を加熱するための非接触の過熱方式を使って調理器にしたものです。
IH調理器は、目に見えない磁力線によって鍋底の金属にうず電流を発生させて、自己発熱(ジュール熱)で加熱させています。
うず電流の大きさは、鍋の金属材料が磁力線を通しやすい物質かどうかによっても影響されます。そのため、鍋の材質によって加熱特性は大きく違います。ただし、基本的に導通する金属材料なら使えないことはないでしょう。
銅やアルミの技術的課題
銅やアルミニウムは、磁力線をほとんど通さないため、うず電流の発生は少ないです。しかも金属抵抗も小さいためジュール熱も小さくなります。
それでも、軽量化のため、アルミニウム製の鍋は必須です。
そのため、コイル電流の周波数依存性や、うず電流を発生しやすい形状にするなど、さまざまな技術検討が行われました。一つ一つ技術課題に対応する中で、オールメタルIHは市場参入できたのです。
但し、IH調理器の価格幅は大きいです。理由は、1台の中に2〜3口ある過熱コイル部を、鍋の材質に応じた加熱コイルにする等しているためです。
実際にIH調理器を使ってみると、驚くべき速さで加熱します。煮物などをすると、あっという間に鍋底が焦げてしまいます。
IH調理器の熱効率は、ガスの2倍も優れていますが、鍋底の温度を急激に上げるという欠点もあります。安全性だけでなく、熱効率も優れているのなら未来に通じる技術です。さらなる発展に期待しましょう。