TCP/IPプロトコルは、ネット通信の決まり事です。通信プロトコルには、7階層で構成している国際標準のOSI参照モデルがあります。TCP/IPプロトコルは、4階層です。何故、両者は階層化して、しかもプロトコルの層構造が違うのでしょう。
TCP/IPを階層化する理由
TCP/IPプロトコルは、インターネットでデータ通信をする決まり事です。この決まり事(約束事項)に従わないと、信号を送っても受信側で、上手く信号を受け取れません。
コンピュータは人間のように柔らかい頭脳を持っていません。そのため、決まりごとがないと何をやっているのか、どう判断して良いのか分からないのです。
プロトコルをしっかり決めないと、信号を送っても受信側で信号を受け取れなくなってしまいます。
このTCP/IPプロトコルは、4つの階層に分けています。では何故、階層化するのでしょうか?
TCP/IPの4つの階層
TCP/IPの4つの階層は、それぞれ、プロトコル(約束事)を意味しています。通信で行っている送信と受信では、双方で約束事を決めて、それに従って信号の送信や、受信をしています。この時、コンピュータは複雑な処理をしています。
但し、複雑な処理でも仕事の内容を細かく分けて、同じような内容を、1つの層にしてしまうと、単純化出来ます。
このように考えて、コンピュータが行っている仕事を、4つの層に分けたものが、TCP/IPの4つの階層です。
OSI参照モデルとの関係
OSI参照モデルは、国際標準化機構によって制定されたもので、7つの階層(レイヤー)に分けられています。OSI参照モデルは、異機種間(OS等が違う機種)でもデータ通信ができるように階層化しています。
OSI参照モデルは、ネットワーク構造設計方針に従って制定しています。
OSI参照モデルの7つの階層の特徴
OSI参照モデルは、最下層の物理層(第1層)から、最上部のアプリケーション層(第7層)で作られています。
階層の特徴は、最上部の層ほど、人間に近い機能に対応しています。
上位層では、メールやウェブ等を扱っています。これに対して、下位層では、コンピュータが扱う、ケーブルや電気抵抗などに対応しています。
OSIとTCP/IPの階層構成が違う理由
OSI参照モデルは、理論上のモデルのため、実製品では使いにくいこともあります。これに対して、TCP/IPは、実際の製品で扱いやすい構成です。
OSI参照モデルとTCP/IPの階層構成が違うのは、このような理由からです。
OSI参照モデルとTCP/IPの階層は、概ね次のような関係です。
階層 | OSI参照モデル | TCP/IPモデル |
第7層 | アプリケーション層 | アプリケーション層(第4層) |
第6層 | プレゼンテーション層 | |
第5層 | セッション層 | |
第4層 | トランスポート層 | トランスポート層(第3層) |
第3層 | ネットワーク層 | インターネット層(第2層) |
第2層 | データリンク層 |
ネットワークインターフェースフ層(第1層) |
第1層 | 物理層 |
まとめ
TCP/IPプロトコルは、インターネットでデータ通信をするための約束事です。
OSI参照モデルは、理論上のモデルのため、分かりやすくする観点から、7つの階層で構成しています。但し、実製品では使いにくいこともあります。
これに対して、TCP/IPは実際の製品で扱いやすいように4つの階層で構成しています。
TCP/IPは、スタンフォード大学などの研究機関で作られ、シンプルな構成のため、広く普及しています。
OSI参照モデルもTCP/IPの階層も、上位層は人に近い機能に対応しています。逆に下位層は、コンピュータ機器間で扱うケーブルや電気抵抗に対応する層です。
階層構造にするメリット
例えば、仕様条件が変わって、設定変更をする場合にも、全体を確認する必要がありません。
階層構造なら、関係するプロトコル階層のみを見直すだけで済みます。これが、プロトコルを階層構造にするメリットです。