秋の虫の鳴き声は、うっとりするほど素晴らしい音を響かせますが、電話で伝えることはできません。この記事では、スズムシやコオロギ、キリギリスの鳴き声が電話で聞こえない理由や、これらの虫の耳がどこに付いているのかを紹介しています。
スズムシやコオロギ、キリギリスの鳴き声が電話で聞こえない理由
スズムシやコオロギ、キリギリスの鳴き声は、電話を通すと聞こえません。その理由は、秋の虫の鳴く周波数が、電話で使っている周波数から外れているからです。
驚いたことに、秋の虫たちの鳴き声は、オーケストラのどんな楽器よりも高い周波数成分が含まれています。
電話で使っている周波数帯域
電話の周波数帯域は300Hz〜3400Hzです。家庭から交換局までは1本の電話回線のため、本来なら周波数帯域の幅を広げることも出来ますが、交換局から他の交換局までは、複数の通信を1本の通信線に多重化して送信しなければなりません。
《多重化とは?》
電気通信信号を送る時には、1つの伝送路に様々な信号を重ねて送信します。つまり、伝送路を共用して信号を送ることです。これをしないと莫大な費用が掛かってしまうからです。
そのため、1つの回線に使用する周波数の幅は、出来るだけ狭くすることになりました。このような事情で、電話の周波数帯域は300Hz〜3400Hzと決められました。
このような電話の周波数帯域は、固定電話だけでなく、携帯やスマートフォンも同じです。携帯やスマートフォンも、基地局までは無線で電波を飛ばしますが、基地局からは、送信相手のいる基地局まで有線で送信しているので、伝送路は共用しています。
スズムシの鳴き声の周波数
スズムシの鳴き声の周波数は、約4500Hzです。これに対して、電話の周波数帯域は300Hz〜3400Hzのため、電話を通してスズムシの鳴き声は伝わらないのです。
秋の虫が鳴く理由は、同種の仲間への信号のため、種によって重ならないようにしています。そのため、虫の種類によっては、電話で通じるものもいますが、大抵は高周波のため電話では聞くことができません。
- スズムシ
約4500Hz (4.5kHz) - コオロギ
約4000Hz(4kHz) - キリギリス
約5000Hz〜(5kHz〜)
秋の虫の耳はどこにあるの?
秋の虫たちの鳴き声の多くは、電話では送信できない程の高周波数だということは分かりましたが、鳴き声を聞くための耳はどこにあるのでしょうか?
秋の虫はメスを誘うために鳴いていて、鳴き声を聞いたメスは、同種のオスが鳴いていることを確認するため、高性能の耳をもっていると聞いたことがあります。メスだけではなく、素晴らしい鳴き声を奏でるオスにも、耳があると思いますが、虫の顔をしっかり観察しても、見当たりません。
《スズムシ・コオロギ・キリギリスの耳》
これらの虫の耳(聴覚器)は、左右の前脚にあります。
まとめ
スズムシやコオロギ、キリギリスの鳴き声は、電話を通すと聞こえません。理由は、これらの虫の鳴く周波数が、電話で使っている周波数から外れているためです。
秋の虫の鳴き声の多くは、オーケストラの楽器よりも高周波ですが、電話は多くの信号を共用して使うために、話ことばが聞き取れれば良いという感覚で、周波数帯域幅を狭くしていたからです。